私は推理小説が好きで高校時代から断続的に読んでいます。その中によく毒薬が出てきます。一番有名な毒薬はなぜか「青酸カリ」ですね。その他、「ヒ素」「アルカロイド」最近は「アナフィラキシーショック」を使ったものもありますね。これらに間違いが非常に多いのが現状です。
青酸カリはあまり殺人に向かない毒薬でしょう。まず一番の問題は青酸カリの管理が法律で決められていることですね。つまりまともなルートでは入手できない(資格があれば入手できるが逮捕されるのは時間の問題)ということです。入手ルートを考えるなら青酸ナトリウムの方がいいでしょう。
TVの推理ドラマなどで被害者がコーヒーを飲んで死ぬ場面があります。コーヒーを飲むとすぐ首を掻きむしるようにして倒れ、やがて探偵が現れ被害者の呼気を嗅いで、「アーモンドの臭いがする。青酸カリだ!」
と言います。そして砂糖入れの砂糖を舐め、
「砂糖に青酸カリが入っている!被害者はこれを飲んだんだ!」
やがて、昨年死んだ爺さんの部屋から、紙に包んだ青酸カリが発見され、それが使われたらしいことが分かります。しかし、被害者がコーヒーに砂糖を入れないということが分かり、やがて探偵が青酸カリをカップの縁に塗ったことを突き止めます。
何かこう書いてしまうと、
「探偵が犯人じゃないのか?」
と思う人もいるかも知れません。私もそんな気がしています。
それはさておき、探偵はどこで間違えたのでしょうか?ヒントです。
・青酸カリの致死量は150~300mg(経口・注射)で無臭の白い粉末で、水に溶けやすいです。
・青酸カリ(KCN)は二酸化炭素(CO2)と水分(H2O)に反応して、シアン化水素(K2CO3)と炭酸カリウム(HCN)に変化します(潮解)。2KCN+CO2+H2O → K2CO3+2HCN すなわち、大気中ではどんどん潮解反応が進行して無毒化します。
・シアン化水素は猛毒の気体で、強いオレンジ~アンズに似た甘酸っぱい臭いです。よくアーモンド臭と言われていますが収穫前のアーモンド臭ですので、ほとんどの日本人はアーモンド臭とは認識できません。
・炭酸カリウムはほぼ無毒で食品添加物(ラーメンのかんすいなど)に使われています。
・コップやスプーンに予め塗っておいても、致死量以下の可能性が強く、また潮解により炭酸カリウムになっています。
・青酸カリは胃に入って胃酸によって分解されることで、シアン化水素が発生し、毒として効果が出ます。一部は食道を逆流して口から出ます。従って、中毒患者に人工呼吸すれば、中毒を起こしたり死んだりする場合があります。但し、マウスツーマウス法での話ですが。一度意識喪失しても気がついた場合は助かる可能性が強いです。
・血液中に入ったシアン化水素は脳の呼吸中枢に作用して、酸素を取り込めないようにします。つまり、窒息死を起こすことになります。
・青酸ガスは化学兵器に使われていたばかりでなく、オウム真理教の地下鉄テロなどで使われています。かつては殺虫剤なども使われていました。
・シアン化水素ガス中毒は、喉の痛みが最初に出ます。次いで、嘔吐、めまい、呼吸困難、不整脈、意識障害、痙攣、発汗、肌がピンク色、呼吸停止、死亡となります。肌がピンク色になるのが特徴と言われていますが、実際にはそうでもなく、死後の死斑がピンク色のものから、全然出ないものまでさまざまです。
・食べたものは数秒で胃まで到達しますが、水分の場合は最も早く、およそ3秒以下です。
さて、探偵はどこで間違えたか分かりましたか?
怪答です。間違いではないですが、正答でもありません。
・人が倒れているのを見たら勝手な判断をせず、すぐに救急車を呼びましょう。
・犯罪現場を勝手にいじってはいけません。
・青酸カリは舐めてはいけません。
・被害者が若い女だったら、探偵は人工呼吸を試みて、被害に逢うでしょう。
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