2017年2月16日木曜日

津波


津波の発生

東日本大震災の津波:
波ではなく海が押し寄せてくるのがわかる
津波は海底地形の変動で起こる長周期の波のことです。ほとんどは地震に伴う海底断層の変位によって起こりますが、海外では崖崩れや氷河の崩落などの地形変動で起こることもあります。漢字では「波」ですが、通常の波とは異なり、非常に長周期です。普通の波では最大で100m周期程度ですが、津波は100km以上の周期があります。最大500km以上の波もあるらしいです。津波は波ではなく、海が押し寄せてくると考えた方がいいです。周期が100kmあるのですから。
従って、通常の波と津波とでは、1000倍以上のエネルギーの差があります。例えば、高さ1mの波(成人の胸から腰)ではびしょ濡れになったり転んだりするぐらいですが、1mの津波では海中に引きずり込まれると考えて下さい。

津波の速度

津波の速度は海の深さによって決まります。津波の速度(伝播速度と言います)=(9.8×海の深さ(m))の平方根(単位はm/s(秒速・m))です。海洋の平均深度は4000mですから、200m/s(秒速200m=720km/h)、音速が1200km/s程度ですから、720km/hはジェット機の巡航速度程度になります(巡航速度は音速の6~7割)。海岸に近づくと水深が浅くなるので、津波の速度は遅くなり、その分高さが増します。

津波の高さ

津波の海岸線付近の高さは、グリーンの公式で計算します。
H2/H1= (b1/b2)^(1/2)×(h1/h2)^(1/4)
水深h1の沖合での津波の高さをH1水深h2の沿岸での津波の高さをH2、b1は湾奥の幅、b2は湾口の幅を表します。
H2={(b1/b2)の平方根 X (h1/h2)の4乗根}X H1
湾の入口の幅1km、深さ100m、波高1m、湾の奥の幅10m、深さ5mの湾の奥の波高を計算すると、
沿岸での波高={(1000/10)の平方根 X (100/5)の4乗根} X 1 = 10 X 2.1 X 1 = 21mです。
ここらまでは、津波の基礎となります。

その他の現象として、次のようなことがあります。
浅水変形
水深変化による波数、速度の変化による波高、波長の変化のことです。速度が遅くなることによることが原因ですが、後の波が前の波に追いついて干渉(後述)することもあります。
屈折
津波は、水深の浅い方向に曲がりながら進みます。
回折
前方に島などがあっても津波はエネルギーを維持したまま、島の後方に回り込みます。
反射
海岸線で津波は反射されます。反射した津波は次の波と干渉したり、屈折したりして、複雑な水の動きを作ります。
干渉
二つの波がぶつかった場合に起きる現象で、波の山と山がぶつかった場所では波高が高くなり、山と谷がぶつかった場所では低くなります。
波高減衰
波の上部が砕け落ちる現象で、砕けた分は波高が低くなります。
遡上
津波が陸上に押し寄せたり、河川を逆流する現象です。津波の被害のほとんどは、遡上によって起こります。陸上への遡上は家屋等の破壊や流出を起こします。抵抗の差によって河川への遡上の方が高くなります。

これらの性質によって次の現象が起こります。
岬へのエネルギー集中
半島や岬のように、海に突き出した地形においては、水深が海岸に向かって徐々に浅くなるため、津波は岬方向へ屈曲し、その結果、岬に津波が集中します。浅水変形と屈折変形が起こりますが、津波のエネルギーは維持されたままになります。
湾の固有振動との一致
遠浅の湾では、湾内で岸と遠浅部で反射を繰り返します。波高減衰は起こりますが、津波との干渉が湾の固有振動と一致すると、湾の深部での波高が極めて高くなります。
湾の継続波の発生
幅の広い湾では、斜めの反射波が海岸方向へ屈曲し、再度津波となります。また、元来の津波と干渉して波高の高低が起こります。

南海地震の規模想定例

南海地震の震源は高知県の南方150km~200km、水深4000mの位置で起こると推定されます。
誤差を考えても、20分~30分程度で高知県南部に到達すると思います。高知県南部はリアス式海岸で湾と岬が連続するため、30m級の津波が予想されます。日本最大の津波は40mほどですから、最大級と言っていいほどの津波になると思います。
また、瀬戸内海でも回折による津波が予想されます。過去の数度の南海地震でも実際に起こっています。波高は1~2mでしょうが、特に河川の遡上に注意が必要です。
福島の実例を見れば、防波堤で津波を止めることはできません。実際には防波堤は津波の侵入を約6分遅らせる効果があったとされています。防波堤のある地区より、ない地区の方が人的被害が少なかったという研究があります。防波堤のない地区では地震と共に全員が山に逃げたのに対し、防波堤のある地区では大事なものを持っていこうとしたりして、逃げ遅れた人が多かったようです。大阪では2~3mの津波が予想されますが、丈夫なビルに逃げ込みましょう。ビルは防波堤に比べて基礎がしっかりしているので、多分2~3mの津波には耐えうると思います。

防波堤の構造
ビルと住宅の基礎

防波堤の基礎は砂や石の上に作られており一般住宅と同じですが、ビルは岩盤中に基礎を取っています。

正しい知識を持ちましょう。津波について流布されていることが正しいわけではありません。





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