2017年5月2日火曜日

とある田舎の光速列車(レールガン)


季節はずれの話なんだが、私が25歳ぐらいの時のこと、今から35年ほど前の冬の話である。

場所は言えないが、広島の山中での出来事。数年に一度という豪雪でしたが、その問題の日には、なぜか鉄道は止まっていなかった。4時間に1本しか列車が来ない、1日4往復しか列車が走っていない超ど田舎である。いや、田舎では生ぬるい。なにしろ沿線には家が全くない。駅の周辺に数軒あるだけというところだった。私はそこで測量をしていたが、線路沿いを測量していても列車を見るのはほとんどないという有様だった。道路も細く車も滅多に来ないので、のどかと言えばのどかな風景だった。

その寒い日に私は車に乗って測量に向かった。雪の中を運転するのは慣れていたが、緩い坂道が登りから下りに替わるところでスリップした。緩い下り坂なのでスピードが出ることもなく、私は軽くブレーキを踏んでみたが車輪は滑る。速度が出てないのでエンジンブレーキは使えない。ハンドブレーキもダメ

その時、ゆるい坂の一番下にある踏切が鳴り出した。私は仕方なく右側の擁壁に車をぶつけて止めようと右にハンドルを切った。車は壊れるが命には代えられない。しかし、車は真っ直ぐに踏切に向かって滑る。踏切の手前で擁壁がなくなっているところまで来ると、列車が来るのが見えた。このままだと完全にぶつかる。光のごとく超高速で走る列車を見たとき、「あっ、俺、死んだ」と思った。

現在はこんなんらしい
この時、私の脳裏には、明日の新聞の1面が浮かんだ。「1日に4往復の列車に自家用車が突っ込んで事故。犯人は25歳の男、自称18歳。未婚。」恐ろしい。しかし、自分の25年間が走馬灯のように頭に浮かぶことはなかった。車はゆっくりと滑って遮断機に当たると、遮断機に撥ね返されて止まった。悪夢は終わった。光速列車は、たちまち1両だけの田舎のジーゼルカーに変わり、ゆっくりと私の前を通り過ぎた。本当に怖かったんや。死ぬかと思ったんやから。

その場所で仕事をしている間は、いつも上り坂にかかる前に時計を見て、列車が来ない時間であることを確認するようになった。凍結した下り坂は例え緩い坂でも危険なことがあるので、運転には十分に注意しよう。それにしても1日4往復しか来ない列車にぶつかる確率っていくらぐらいなんだろう?

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