2017年1月18日水曜日

シカサンハグハグ


あれはずいぶん前のことです。今の奥さんと結婚する前のことで、まだ、結婚するのかどうかもよく分からない時分のことでした。私の妻になる女が、奈良に行ってみたいと言い出しました。今まで奈良には1回しか行ったことがなく、しかも修学旅行で行っただけということでした。

京阪神に住んでいるのに奈良に行ったこともないというのも珍しいですが、京阪神の学校で奈良に修学旅行に行くというのも珍しいですね。と言っても、淡路島ははるか遠くの島だと思っていたらしいからなんとなくうなずける節もあります。結婚前に大阪から網干行の快速電車に乘ったら、海と島が見えたと言って感動していたから、ずいぶん田舎者と結婚するのだと思ったんでしょうね。確かに私の実家の周りには田んぼや畑が多かったけど、今は全部住宅地になっています。

さて、私の妻になる女を連れて、修学旅行以来の奈良へ行きました。東大寺の大仏殿を見て、「大きな建物」と言い、奈良の大仏を見て、鎌倉の大仏とどちらが大きいのか尋ねるぐらい、天然ボケを振りまいていました。奈良はそこら中が奈良公園で鹿が徘徊しています。ここでは鹿は神様の使いです。たまに道路に出てきては渋滞の原因を作る鹿もいますが、神様の使いだから鹿のやることはいつでも正しいのです。そういうわけで奈良の鹿は人に慣れています。人が近づくと何か美味しいものでもくれるのかと集まってくる連中もいるぐらいですが、神様の使いだから何かをあげなければ天罰が下されます。

奈良では鹿せんべいを売っていて、鹿に餌をあげることができます。鹿せんべいがなくなっても、もっとよこせとついてくるから、厚かましいですが、神様の使いだからまた鹿せんべいを買わなければななりません、なんてことはありません。鹿せんべいは安いですが食べたら不味いそうですから食べないようにして下さい。なお、「鹿の糞」というお菓子もありますが、これは人間用です。

私が鹿せんべいがなくなって鹿の群れから脱出しようとしたそのとき、私は腰に違和感を覚えました。鹿が一匹私の腰にかじりついて、ハグハグしているのです。別に痛くはありませんでしたが、鹿が離れて行ったあとの私の腰には、鹿のよだれがべっとりとついていました。ここでは、鹿は神様の使いだから何をやってもかまわないのです。

古都奈良は、1300年前から続く不思議の都です。


これが問題のお菓子です。

奈良名物 御神鹿のふん チョコ豆 菓子 80g



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