2017年1月26日木曜日

誰もいない恐山

私が26~27歳の頃の、夏から秋にかけての3か月間、仕事で青森県の十和田温泉郷にいました。十和田温泉郷は当時は他の温泉から、パイプで湯を引いていたらしいのですが、硫黄分の多いよく温まる温泉でした。この温泉は建付けが悪く、あちこちに隙間がたくさんあります。もちろん男湯から女湯が覗けるのですが、何しろ冬場のスキー用の宿舎なので、ほとんど私一人。若い女性など来るはずもありません。

さて、大抵は現場の仕事となると、休みなしで働くのですが、ここの現場は週に1回休みがあるのです。私はその休みを利用して北東北の観光地を廻っていたのですが、別に予定を立てていたわけではなく、思いつきであちこち廻っていました。だから近い十和田湖や奥入瀬渓谷は何度も行きました。

その朝は曇っていたのですが、初めて恐山に行ってみようと思いました。車で八甲田を抜けて青森から下北半島へ出て、だだっ広い草原の中のローカル線に沿って「むつ」へ。家が全くなく花が草原に咲いてとてもきれいでしたが、今はもうそんな風景もなくなっているのでしょうか?原子力船の「むつ」をちらっと見て、恐山へ向かうと、しとしとぴっちゃんと雨が降ってきました。大した雨ではありませんが、かなり陰気です。

入場料を払って恐山 伽羅陀山菩提寺の境内に入ると、イタコがいない。イタコは恐山大祭のときにだけ、どこからともなく現れる謎の人です。私と入れ替わりに中年の男の人が出てきて黒い車に乗って行きました。境内の左側が賽の河原、右側に恐山温泉があります。真冬に誰もいないはずの温泉等から話し声が聞こえることで有名な温泉です。一説によればここにはゲゲゲの鬼太郎の妖怪病院があるそうです。

賽の河原に入るとあちこちに石積みと子供のおもちゃや風車などがある有名な風景です。小高いところから見るとすぐ前方に白いワンピースの女の人がお祈りをしていました。他には誰もいない荒涼たる風景です。すぐそこに宇曾利湖があり、あちこちから温泉が湧いています。線香の臭いだけが雨の中に漂っています。車酔いのような頭痛がします。ふと振り向くと女の人がいない、そういえば女の人の後ろを通った時、気配が希薄だったような気が・・・。女の人が消えた?それが不思議でないような独特の雰囲気。霊山だから霊の気配を感じるのは当然と思って、霊障が起こらないように予めバファリンを飲んでいたのだが。改めて見ると恐山の霊場に私一人だけ、のはずなんですが、あちこちから希薄な人の気配がして、また霊障が・・・、

私には霊障という超能力があります。この能力は霊に出会うと頭痛・眩暈・吐き気など、車酔いか二日酔いかというような症状が出るのです。この有難くない能力のおかげで何度ひどい目にあったことか!この日も帰りに車を路側帯に停めて1時間ほど寝ていたのですから。
その後、林道を通って薬研温泉に行ったのですが、どこが温泉か分からないまま通り過ぎてしまいました。

下調べは大切ですね。

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