2017年4月21日金曜日

脳腫瘍はかなり怖い病気

今から10年ほど前の秋のこと、私はストレスが原因でうつ病になった。仕方がないので心療内科に行ったところ、大きな病院の紹介状を書いてくれた。それで私はその病院に行き診察を受けたところ、かなりひどい状態だったらしく、
「入院しておけば、会社も気兼ねなく休めるでしょう」
という言葉で入院となった。

「まず、脳に何かの異常がないことを確認しましょう」
ということで、頭部のCTとMRIをとったところ、
「左目の奥の脳の付近に何か変なものがありますね。脳神経外科の先生に診てもらいましょう」
となった。
翌日から主治医がひとり増えた。

主治医が増えてから随分と忙しくなった。
「まず、腫瘍が動脈から養分を取っているかどうか調べましょう」
ということになって、そのためにカテーテル検査をされることになった。
病院の検査は楽で、看護師さん(今は看護婦さんとは言わない)がベッドごと運んでくれるので楽である。そんなこんなで、有無を言わせずカテーテル検査の部屋に運ばれた。

この検査は股関節付近の動脈からカテーテルを入れて、患部付近で何か変なもの(何だったか忘れてしまった)をピュッピュッと出して撮影すると、細かい血管まではっきり写るらしい。実は私も何をされるのかよく分かってなかった。
股関節付近かららしいし、下着は着るなということでしたので、検査室に入ると私はすぐに入院着を脱ごうとしたが、
「脱がなくても、いいですから。ベッドに転がってここに腕を置いて下さい。」
と言われた。
 言われたところに腕を置くと、ベルトで両腕を留められた。
「何をするんですか」
と訊くと、
「ときどき、暴れる人がいるので」
とのことだったが、よく意味がわからなかった。それからおもむろに入院着を脱がされました。(暴れる人もおるわ)
検査は股関節のあたりに数本麻酔を打って、少し切開してカテーテルを入れるのだが、痛い。
「痛いですか」
と訊かれたので、
「とても痛いです」
と答えた。すると
「なかなか動脈に入らないんです」
とグリグリする。
「あのー、とっても痛いんですが」
「ああ、そうですか」
とつれない態度。ようやく
「入りました」
となった。
入ってしまえば意外と痛くなかったが、30秒ほどで
「患部に着きました」
という声が聞こえました。何か変な液がカテーテルの先から出ると、身体が熱くなってめまいがした。
「脳腫瘍を確認しました」
との声。おい、おい、患者にも聞こえとる。
それから6時間の安静になった。

とうとう手術の前日になり主治医から手術の説明があった。予定時間は12時間30分と言われた時には驚いた。もしかしたらこれは重大な病気かも知れないと思った。
「視神経を圧迫しているけど7割ぐらいは目に影響はないから」
なんて言われたが、それじゃあ、3人に一人は失明かいなと思った。
「成功率は9割ですから安心してください」
と言われたが、それじゃあ10人に1人は死ぬんかいと思った。

いやでも手術の日はやってくる。麻酔注射を打つと眠くなってきたが
「眠らないで下さい」
と看護師さんが言う。
「はい」
と答えたところまでは覚えているが。

気がつくと集中治療室だった。時間を聞くと夕方だったが、麻酔のせいで時間感覚がなくなって何回も時間を聞いた。手術は予定より順調に行って8時間半で終わったようだった。ただ、良性腫瘍だと思っていたのが、悪性リンパ腫だった。主治医は細かく話してくれた。あいまいなことを言ってもどうせすぐに調べるが。悪性リンパ腫は白血病と共に血液のがんといわれるもので、早く転移していく。成功率は9割もないはずだった。
手術後はひどい状態で、顔中が腫れて頭が血だらけ、目は腫れて見えないし、喉に管を通していたので声が出ない、頭の前半分は剃られていたらしい。傷口はホッチキスみたいなもので止めてあった。

毎日1~2回血液検査をされるし、そうでなくても何本も点滴を打たれているので、注射に対して耐性ができて、どこに注射されても大丈夫な体にされてしまった。
一週間ほどしたとき、主治医がやってきて、転移の有無を確かめるので骨髄液を採取したいといった。入院着の胸を開けられたので何か知ってることと違うなと思い、
「全身麻酔で腰から取るんじゃないんですか」
と聞いてみた。
「いいえ胸骨から採ります。」
麻酔はしますが。胸に2~3本麻酔を打たれて、大きな注射針を胸の真ん中にさされた。最初は痛くなかったのですが段々と痛くてたまらんようになってきた。
「痛いですか」
と主治医が訊くので、
「とても痛いです」
と答えたが、
「そうでしょう。骨は麻酔が効きませんから」
で済まされてしまいました。筑波のガマのように汗だくになった。
2~3週間して退院となったが、最初に病院の地下の散髪屋で丸坊主にしてもらった。頭の前半分が丸坊主で後ろ半分が長いのは大変不気味である。

脳腫瘍の手術で脳をいじった影響かどうか知らんけど、幻覚を見るようになった。はっきりと見えるわけではなく、何かぼんやりと視野の中に何かあるという感じだった。
入院している間は、視野の中央に白いものがくると、たくさんのヤドカリがラインダンスを踊っているようなものであった。天井を見ればラインダンス、壁を見ればラインダンス、トイレに入ればラインダンス、気分もウキウキとはなるわけないわな。
退院した頃には、ヤドカリの影がぼやけてきてやがて白~黒の雲のようなかたまりになった。はっきりと幻覚と意識できるからいいが、幻覚と分からなければ精神病状態だろうなと思っていた。何となく精神病世界の片りんを見たような、見なかったような・・・
現在でも、時々視野の端の方に白い影が見えることがある。うちの裏の袋小路でよく見えるのだが、これは幻覚?精神病?それとも・・・

とにかく、助かったようである。

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