自分を病気だと信じて疑わない人たち

「どうもこの頃調子が良くない」
まあ、誰でもそんなことはあるでしょう。どうしますか？
「ちょっと医者にでも行って診てもらおうか」
となりますね。気のせいだから別に医者に行く必要はないと考える人もいるでしょう。まあ、後者の方はともかくも、前者の方は、医者に行くことになります。医者は血液検査や問診、視診、聴診などをした結果、
「病気ではありません」
と言います。
「いやいや、俺はこんなに調子が悪いんだ」
納得いかない患者は、追加の検査を要求します。医者は仕方なしにCTやらMRIやら超音波やらの検査を行います。しかしやっぱりどこにも悪いところはない。医者は儲かるとはいえ、そんなのをいつまでも相手にしていたら、わずらわしい。だいたい病気じゃないんだから医者がどうしようもないじゃないか。
「肝臓が少し腫れてるかも知れませんね。血液検査で中性脂肪が少し多いので、脂肪肝ですね」
とかなんとか適当なことを言って、中性脂肪の薬を処方して、患者は帰宅するとなりますね。やがて「やはり調子が悪い。病気かも知れない」と次の病院へ行くことになります。これを「ドクターショッピング」と言いますが、話とはそれほど関係がありません。

自分は病気ではないのに、病気だと信じて疑わない人は、「ノイローゼ」の一種で「心気症」という精神疾患です。固定観念によって行動が制限されることは誰でもあることですが、これもごく軽い心気症と言えます。
ひどい心気症は、まじめで、プライドが高く、神経質で友達がいない人に大きなストレスがかかったときに起こることが多いようです。

症状は様々ですが、自分では重い病気にかかっていると思い込んでいるために、民間療法や霊感療法・宗教勧誘などに引っ掛かってしまう場合もあります。実際の病気よりもこちらの方が問題かも知れませんね。

心気症の症状は人によって違うため、確たる治療法はありません。精神疾患の一種ですから、精神科の受診となります。色々な検査を行い、実際に病気がないのを確かめてから、治療を行います。
心気症は、うつ病・強迫性障害・不安性障害などの精神疾患を併発していることも多く、その場合は精神科で併発している病気の治療を一緒に行うと、気になっている症状が治まる場合もあります。不安に対しては普通は抗不安薬を用いますが、薬によって心気症を治療できないため、心気症の不安を抑えるために用います。


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